第二十二回 『自民党総裁選で思い出すこと』
70年代の自民党は「三角大福中」の時代と言われた。三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘の一字を取ってつなげた名称だ。
彼らはすべてが創業政治家で世襲の政治家はいない。それぞれが独自の生い立ちで政治家となり、党内で強固な派閥をつくり、「派閥あって党無し」とも言われた。
彼らは当然のように総理・総裁を目指し、人を集め、金を集め、時間をかけて独自の政策構想を練り上げた。そして結果的に、この5人は総裁の座に就き首相を務めたのであった。共通するのは、生まれ故郷を選挙区とした"土着性"であった。
今、始まりつつある自民党総裁選挙を眺めていると、しきりに当時のことを思い出す。
まず、当時の政争は、総裁候補はもちろん派閥間でも政策面、政治面の抗争はすさまじいものであった。
ある外務省のOBが私に「70年代までの日本外交は政治主導だった」と言ったことがある。これは「80年代以降の日本外交は官僚主導」と言っているのだ。今や官僚主導の外交が当たり前となってしまっている。
70年代と今の時代とを比べると、どちらがより困難な時代かと言えば、はるかに現代の方が困難である。なぜなら、70年代は将来を容易に展望することができたが、現代は、あらゆる面で見通すことが難しい時代だ。
要するに、現代は70年代よりも段違いに優れた政治指導者と政策構想を必要としているのである。進行中の自民党総裁選(立憲も同様)が生徒会長選挙のように見えるのは私だけではないだろう。
2024.9.8.