第十五回 『「中選挙区連記制」が最善か!現行制度転換の機運高まる(1)』
 
 現行選挙制度の採択から30年を経て、ようやく制度の欠陥を放置できないという世論が高まりつつある。おそらく、この機会を逃したら、歴史的変動がない限りこのまま続いて政治の劣化が極まってしまうのだろう。
 30年前の選挙制度改革論議の中に「中選挙区連記制」という有力な主張があった。私もそうだし細川護熙元首相も、日本新党結党宣言の中で中選挙区連記制を掲げた。宮沢喜一元首相もこの制度改革には賛成であった。
 「連記制」とは、選挙の投票で二人、あるいは三人の名を書く制度である。そうすると、単記制のように、同一政党に所属する議員(候補者)同士や支援者同士の険悪な政争やサービス競争が避けられる。
 80年代から相次いだ自民党の構造汚職は、①サービス競争に多額な金が必要、②それを用意することが困難、③汚職に走るーーという論理である。二大政党論という絵に描いた餅もあったが、政界のホンネは、「中選挙区制だと汚い金に手を出してしまう」ところにあった。だから、この制度が、望ましい政治、望ましい政治家を産まなかったのは当然だ。
 当時の政治腐敗に対する対応は、①贈収賄事件の刑罰強化、②政治資金規制の強化、③選挙活動の規制が本筋であり、また地方分権、規制改革などにより許認可事務の縮小を企ることも有効であった。
 だが、このような方法は、「悪い政治家を少なくする」ことには有効だが、必らずしも「優れた政治家を多くする」ということにはならないだろう。
 ここで考えられるのが、中選挙区連記制である。次回に検討しよう。
2023.7.24.